労働基準法第3条(均等待遇)の条文
労働基準法第3条(均等待遇)
使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。
労働基準法第3条(均等待遇)の解説
趣旨:使用者による差別的取扱を禁止した規定
本条は、労働者の国籍、信条、社会的身分を理由とした、使用者による労働条件の差別的取扱を禁止した規定です。
本条は、法の下の平等を規定した憲法第14条の理念に則り規定されたものです。
日本国憲法第14条
1 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2 (以下省略)
あくまで国籍・信条・社会的身分の差別のみ
なお、本条では、あくまで国籍、信条、社会的身分の3点を理由とした場合のみの差別的取扱を禁止しています。
ただし、これら以外を理由とした差別的待遇については、民法第90条違反として無効となる可能性もあります。
民法第90条(公序良俗)
公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
また、性別による差別については、男女雇用機会均等法の各規定により、禁止されています。
用語の定義
「使用者」とは?
【意味・定義】使用者とは?
「使用者」とは、事業主または事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。
労働基準法第10条
この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。
「労働者」とは?
【意味・定義】労働者とは?
「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
労働基準法第9条(定義)
この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
「信条」とは?
【意味・定義】信条とは?
「信条」とは、特定の宗教的または政治的信念をいう。
「信条」とは、「特定の宗教的もしくは政治的信念」のことを意味します(発基17号(昭和22年9月13日)。後掲)。
信条そのものにもとづく差別は本条違反となります。
他方で、信条にもとづく行動が企業の秩序維持に重大な影響を与えるような場合において、使用者が、労働者に対し、その行動を理由として差別的取扱をしたとしても、本条違反とはなりません。
「社会的身分」とは?
【意味・定義】社会的身分とは?
「社会的身分」とは、生来の身分をいう。
「社会的身分」とは、「生来の身分」のことを意味します(発基17号(昭和22年9月13日)。後掲)。
「賃金」とは?
【意味・定義】賃金とは?
「賃金」とは、「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」をいう。
労働基準法第11条
この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。
「労働条件」とは?
【意味・定義】労働条件とは?
「労働条件」とは、一般に、労働者の職場における一切の待遇をいう。
労働条件は、労働基準法をはじめ、各種法律では明確な定義がありません。
ただし、日本国憲法第27条第2項(後掲)の「勤労条件」は、ここでいう労働条件と同義であるとされています。「その他の労働条件」とは?
労働条件には「雇入れ」は含まれない
「その他の労働条件」には、「解雇、災害補償、安全衛生、寄宿舎等に関する条件も含む」とされています(基収1365号(昭和23年6月16日)、基発第150号(昭和63年3月14日)。後掲)。
なお、いわゆる「採用の自由」により、「雇入れ」に関しては、本条は適用されません(最高裁判決昭和48年12月12日・三菱樹脂事件。後掲)。
労働基準法第3条(均等待遇)違反の効果・罰則
本条に違反して、労働者に対し差別的取扱をおこなった使用者は、労働基準法第119条により、「6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」に該当します。
労働基準法第119条
次の各号のいずれかに該当する者は、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
(1)第3条、第4条、第7条、第16条、第17条、第18条第1項、第19条、第20条、第22条第4項、第32条、第34条、第35条、第36条第6項、第37条、第39条(第7項を除く。)、第61条、第62条、第64条の3から第67条まで、第72条、第75条から第77条まで、第79条、第80条、第94条第2項、第96条又は第104条第2項の規定に違反した者
(2)第33条第2項、第96条の2第2項又は第96条の3第1項の規定による命令に違反した者
(3)第40条の規定に基づいて発する厚生労働省令に違反した者
(4)第70条の規定に基づいて発する厚生労働省令(第62条又は第64条の3の規定に係る部分に限る。)に違反した者
なお、本条は、あくまで「差別的取扱」を禁止している規定です。
このため、労働協約、就業規則、労働契約等において、差別的取扱を規定したとしても、そのこと自体は本条違反とはならず、実際に差別的取扱をすることで本条違反となります。
労働基準法第3条(均等待遇)に関連する法令
日本国憲法第27条
1 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
3 児童は、これを酷使してはならない。
労働基準法第3条(均等待遇)の解釈例規
発基第17号(昭和22年9月13日)
信条とは、特定の宗教的もしくは政治的信念をいい、社会的身分とは、生来の身分をいうこと。
基収第1365号(昭和23年6月16日)、基発第150号・婦発第47号(昭和63年3月14日)
「その他の労働条件」には解雇、災害補償、安全衛生、寄宿舎等に関する条件も含む趣旨である。
労働基準法第3条(均等待遇)に関連する判例
最高裁判決昭和48年12月12日・三菱樹脂事件
労働基準法3条は労働者の信条によって賃金その他の労働条件につき差別することを禁じているが、これは、雇入れ後における労働条件についての制限であって、雇入れそのものを制約する規定ではない。
