労働基準法第1条第1項(労働条件の原則)の条文
労働基準法第1条(労働条件の原則)
1 労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。
2 この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。
労働基準法第1条第1項(労働条件の原則)の解説
趣旨:労働基準法の解釈の基本観念を規定
本項は、労働基準法の解釈の基本観念として、労働条件の原則について規定しています。
本項により、労働者が人間として価値ある生活を営むための必要な労働条件が保障されることとなります。
用語の定義
「労働条件」とは?
【意味・定義】労働条件とは?
「労働条件」とは、一般に、労働者の職場における一切の待遇をいう。
労働条件は、労働基準法をはじめ、各種法律では明確な定義がありません。
ただし、日本国憲法第27条第2項(後掲)の「勤労条件」は、ここでいう労働条件と同義であるとされています。
なお、ここでいう労働条件には、具体的には、次のものが含まれます。
労働条件の具体例(一部)
- 契約期間
- 就業場所
- 業務内容
- 労働時間
- 休日
- 休暇
- 賃金
- 災害補償
- 安全衛生
- 福利厚生
「労働者」とは?
【意味・定義】労働者とは?
「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
労働基準法第9条(定義)
この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
「人たるに値する生活」とは?
「人たるに値する生活」とは、憲法第25条第1項に規定する「健康で文化的」な生活を内容としたものとされています。
日本国憲法第27条
1 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
ただし、この「人たるに値する生活」には客観的な基準があるわけでなく、社会通念によって決まるもの、とされています。
なお、「人たるに値する生活」には、労働者本人のみならず、標準家族をも含めて考えられます(発基17号(昭和22年9月13日)。後掲)。
「標準家族」とは?
標準家族の範囲は、特に客観的に定められているものではなく、「その時その社会の一般通念によつて理解されるべき」とされています(基発401号(昭和22年11月27日)。後掲)。
労働基準法第1条第1項(労働条件の原則)違反の効果・罰則
本項の違反には、特に罰則はありません。このため、本項の違反は問題になりません(福岡地裁判決昭和25年4月8日)。
以上の点から、本項を含めた労働基準法第1条は、訓示規定とする考え方が有力です。
労働基準法第1条第1項に関連する法令
日本国憲法第27条
日本国憲法第27条
1 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
3 児童は、これを酷使してはならない。
労働基準法第1条第1項(労働条件の原則)の解釈例規
発基第17号(昭和22年9月13日)
本条は労働者に人格として価値ある生活を営む必要を充すべき労働条件を保障することを宣明したものであつて本法各条の解釈にあたり基本観念として常に考慮されなければならない。
発基第17号(昭和22年9月13日)
労働者が人たるに値する生活を営むためにはその標準家族の生活をも含めて考へること。
基発第401号(昭和22年11月27日)
- 労働者が人たるに値する生活を営むためには、その標準家族の生活をも含めて考えるとあるが、その「標準家族」とは扶養家族の何々を指称するか。
- 法第1条は、労働条件に関する基本原則を明らかにしたものであつて、標準家族の範囲はその時その社会の一般通念によつて理解されるべきである。
