労働基準法第11条の条文

労働基準法第11条

この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。

労働基準法第11条の解説

趣旨:「賃金」を定義づけた規定

本条は、「賃金」を定義づけた規定です。

本条により、賃金の要件は、以下のとおりとなります。

賃金の要件
  • 「名称の如何を問わ」ないこと。
  • 使用者が「労働の対償として」支払うものであること。
  • 使用者が「労働者に支払う」ものであること。

これは、非常に曖昧な要件であるため、実務上は、解釈によって決まります。

用語の定義

「賃金」とは?

賃金とは、いわゆる給与のほか、以下のものも含まれます(発基第17号(昭和22年9月13日)。後掲)。

賃金の範囲

労働者に支給される物又は利益であって、次のものは賃金に該当します。

  • 所定貨幣賃金の代りに支給するもの(その支給により貨幣賃金の減額をともなうもの)
  • 労働契約において、あらかじめ貨幣賃金のほかにその支給が約束されてゐるもの
  • 労働協約、就業規則、労働契約等によってあらかじめ支給条件が明確である場合における退職手当(臨時の賃金等)、結婚祝金、死亡弔慰金、災害見舞金等

賃金に含まれる具体例

賃金に含まれるものの具体例としては、以下のものがあります。

賃金に含まれる具体例
  • 一部の実物(基発第452号(昭和22年12月9日))
  • 栄養食品・保険薬品(前提条件あり。基収第1589号(昭和27年5月9日))
  • 通勤定期乗車券(通勤手当。基収第130号(昭和25年1月18日)、基発第90号(昭和33年2月13日)。後掲)
  • スト妥結の一時金(基発第137号(昭和28年3月20日))
  • 一部のチップ(基発第164号(昭和23年2月3日))
  • 通勤に使用する私有車への通勤手当(基収第6212号(昭和28年2月10日)、基発第150号(昭和63年3月14日))
  • 一部の食事(前提条件あり。基発644号(昭和30年10月10日))
  • 昼食料補助(基収第6126号(昭和26年12月27日))
  • 労働者の所得税の負担(基発第150号(昭和63年3月14日))
  • 社会保険料の被保険者負担分(基発第712号(平成3年12月20日)。後掲)

賃金に含まれない具体例

賃金に含まれないものの具体例としては、以下のものがあります。

賃金に含まれないものの具体例
  • 実物(例外あり。基発第452号(昭和22年12月9日))
  • ストックオプション(基発第412号(平成9年6月1日))
  • チップ(例外あり。基発第164号(昭和23年2月3日))
  • 法定休業補償(平均賃金)を越えるもの(基収第3432号(昭和25年12月27日)
  • 交際費(基収第6126号(昭和26年12月27日))
  • 食事(例外あり。基発644号(昭和30年10月10日))
  • 使用者による労働者の生命保険料の負担(基発第150号(昭和63年3月14日))
  • 制服・作業衣(基発第297号(昭和23年2月20日))
  • 作業用品代・損料(基収第2162号(昭和17年5月10日))

「労働の対償」とは?

【意味・定義】労働の対償とは?

「労働の対償」とは、使用従属関係における労働の対価をいう。

労働基準法第11条違反の効果・罰則

本条は、定義条項であるため、効果・罰則は特にありません。

労働基準法第11条の解釈例規

発基第17号(昭和22年9月13日)

(一)労働者に支給される物又は利益にして、次の各号の一に該当するものは、賃金とみなすこと。

(1)所定貨幣賃金の代りに支給するもの、即ちその支給により貨幣賃金の減額を伴ふもの。

(2)労働契約において、予め貨幣賃金の外にその支給が約束されてゐるもの。

(二)右に掲げるものであつても、次の各号の一に該当するものは、賃金とみなさないこと。

(1)代金を徴収するもの、但しその代金が甚だしく低額なものはこの限りでない。

(2)労働者の厚生福利施設とみなされるもの。

(三)労働協約、就業規則、労働契約等によつて予め支給条件が明確である場合の退職手当は法第十一条の賃金であり、法第二十四条第二項の「臨時の賃金等」に当たる。

(四)結婚祝金、死亡弔慰金、災害見舞金等の恩恵的給付は原則として賃金とみなさないこと。但し、結婚手当等であつて労働協約、就業規則、労働契約等によつて予め支給条件の明確なものはこの限りでないこと。

基収第130号(昭和25年1月18日)、基発第90号(昭和33年2月13日)

○○通運株式会社○○支社では労使間の協定書により通勤費として六ヶ月毎に定期券を購入し、それを支給しているが、このような通勤定期券の支給は法第十一条の賃金と解すべきか。
設問の定期乗車券は法第十一条の賃金であり、従って、これを賃金台帳に記入し又六ヶ月定期乗車券であっても、これは各月分の賃金の前払として認められるから平均賃金算定の基礎に加えなければならない。

基収第6126号(昭和26年12月27日)

左記は法第十一条の賃金でないと考えられるが如何。

一 昼食料補助
業務の性質上都内(市内)及び隣接地出張が頻繁で、以前は事業所所在の市域隣接地並びに特定地に出張して正午を過ぎたときは旅費規定に基づき日当の四割を昼食料として支給していたが取扱上煩雑なので、組合と協議の上出勤一日につき五十円を昼食料補助として支給することとした。
賃金でないと考えるが如何。
二 居残弁当料、早出弁当料
次の時刻に仕事をさせた場合、特地七十円、甲地六十円、乙地五十円を居残弁当料、早出弁当料として支給しているが賃金か。これも業務の性質上定時間勤務後予測しない仕事が出てくること多く、また早出を要する場合があり、実際食事を必要とするので各地実情調査の上大体このために要する部分の経費を補足しているもの。(イ)午後七時を過ぎた場合、(ロ)午前六時を過ぎた場合、(ハ)午前七時までの出勤の場合

設問の昼食料補助、居残弁当料及び早出弁当料は法第十一条の賃金である。

基発第712号(平成3年12月20日)

4 育児休業期間中の賃金等
育児休業法上育児休業期間中の賃金支払いは義務付けられておらず、労使の任意の話し合いに委ねられていること。
また、社会保険料の被保険者負担分については、育児休業期間中についても労働者が負担すべきものとされているが、事業主が被保険者負担分を肩代わりする場合には、当該負担分は法第一一条の賃金として取り扱われること(昭和六三年三月一四日付け基発第一五〇号)。したがって、育児休業が終了した後一定年限労働しなければ当該賃金額分を労働者に支払わせるとの取扱いは、法第一六条に抵触するものと解されること。
事業主が育児休業期間中に社会保険料の被保険者負担分を立替え、復職後に賃金から控除する制度については、著しい高金利が付される等により当該貸付が労働することを条件としていると認められる場合を除いて、一般的には法第一七条に抵触しないと解されるが、法第二四条第一項ただし書後段により労使協定が必要であること。また、一定年限労働すれば、当該債務を免除する旨の取扱いも労働基準関係法上の問題を生じさせないこと。