労働基準法第15条第1項(労働条件の明示)の条文
労働基準法第15条(労働条件の明示)
1 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
2 前項の規定によって明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
3 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から14日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。
労働基準法第15条第1項(労働条件の明示)の解説
趣旨:使用者による労働条件の明示義務を規定
本項は、使用者による、いわゆる「労働条件通知書」を使用した労働条件の明示義務について規定しています。
本項では、労働条件通知書の記載事項と、交付の方法について規定しています。
本項は、すべての労働契約について適用されます。
このため、たとえ日雇いの労働契約(いわゆる「アルバイト」の場合を含む。)であっても、使用者は、労働条件通知書を交付する義務があります。
労働条件通知書の記載事項
労働条件通知書の記載事項一覧
労働条件通知書には、以下の事項を記載しなければなりません。
労働条件通知書の記載事項一覧
- 労働契約の期間
- 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準
- 就業の場所
- 従事すべき業務
- 始業及び終業の時刻
- 所定労働時間を超える労働の有無
- 休憩時間、休日、休暇
- 労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換
- 賃金(退職手当・ボーナスを除く)の決定、計算及び支払の方法、
- 賃金の締切り及び支払の時期
- 退職(解雇の事由を含む。)
- 昇給
- 退職手当の定めが適用される労働者の範囲
- 退職手当の決定、計算及び支払の方法
- 退職手当の支払の時期
- 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及び各種手当並びに最低賃金額
- 労働者に負担させるべき食費、作業用品
- 安全及び衛生に関する事項労働者に負担させるべき食費、作業用品
- 職業訓練
- 災害補償及び業務外の傷病扶助
- 表彰及び制裁
- 休職
絶対的明示事項・相対的明示事項・その他の記載事項とは?
絶対的明示事項とは?
絶対的明示事項とは、必ず書面で明示しなければならない労働条件のことです。
具体的には、以下のものをいいます。
【意味・定義】絶対的明示事項とは?
「絶対的明示事項」とは、労働基準法第15条第1項により、労働条件通知書において、使用者に書面による明示が義務づけられた労働条件であって、次のものをいう。
- 労働契約の期間
- 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準
- 就業の場所
- 従事すべき業務
- 始業及び終業の時刻
- 所定労働時間を超える労働の有無
- 休憩時間、休日、休暇
- 労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換
- 賃金(退職手当・ボーナスを除く)の決定、計算及び支払の方法、
- 賃金の締切り及び支払の時期
- 退職(解雇の事由を含む。)
相対的明示事項とは?
相対的明示事項とは、必ずも書面ではする必要はないものの、明示しなければならない労働条件のことです。
具体的には、以下のものをいいます。
【意味・定義】相対的記載事項とは?
「相対的記載事項」とは、労働基準法第15条第1項により、書面では必要がないものの、使用者に明示が義務づけられた労働条件であって、次のものをいう。
- 昇給
- 退職手当の定めが適用される労働者の範囲
- 退職手当の決定、計算及び支払の方法
- 退職手当の支払の時期
- 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及び各種手当並びに最低賃金額
- 労働者に負担させるべき食費、作業用品
- 安全及び衛生に関する事項労働者に負担させるべき食費、作業用品
- 職業訓練
- 災害補償及び業務外の傷病扶助
- 表彰及び制裁
- 休職
相対的明示事項も労働条件通知書に記載する
上記のように、相対的明示事項については、必ずしも書面で明示する必要はなく、口頭での説明で問題ありません。
しかしながら、使用者として、明示したことを証明できるように、相対的明示事項であっても労働条件通知書に明示したうえで、その労働条件通知書を労働者に対し交付したことを証明できるようにしておくことが望ましいです。
同様に、労働者としても、労働条件を把握するために、相対的明示事項が記載された労働条件通知書の交付を求めることが望ましいです。
その他の記載事項とは?
なお、絶対的明示事項、相対的明示事項の他にも、以下の内容を記載することが望ましいとされています(基発第1228号第15号(平成30年12月28日)後掲。)。
労働条件通知書のその他の記載事項
- 明示を行った日付
- 担当者の個人名
- 労働条件を明示した主体である事業場の名称
- 法人等の名称または使用者の氏名等
【補足】パートタイム労働契約の場合の記載事項
パートタイム労働契約における特定事項とは?
なお、パートタイム労働法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)が適用される労働契約の場合は、以下の4つの事項についても、明示しなければなりません(パートタイム労働法第6条第1項)。
パートタイム労働法における特定事項
- 昇給の有無
- 退職手当の有無
- 賞与の有無
- パートタイム労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口
パートタイム労働契約の労働条件通知書も書面で明示する
パートタイム労働契約の特定事項についても、絶対的明示事項であり、書面による明示義務があります(パートタイム労働契約第2条第1項)。
このため、パートタイム労働契約の労働条件についても、労働条件通知書に記載しなければなりません。
労働条件通知書の交付方法
労働条件通知書は書面・FAX・電子メール等で交付する
労働条件通知書の交付方法は、労働基準法施行規則第5条第4項(後掲)により、次の3つです。
3種類の労働条件通知書の交付方法
- 書面の交付(労働基準法施行規則第5条第4項柱書)
- ファクシミリの送信(同第1号)
- 電子メール等の送信(同第2号)
以下、それぞれ詳しく解説します。
書面の交付
労働条件通知書を使用する
書面の交付は、労働条件が明示された書面、一般的には、「労働条件通知書」の交付によります。
特に問題がなければ、厚生労働省のモデル労働条件通知書を使用し、または参考に作成します。
書式については、「書面の様式は自由であること」とされています(基発第14号(平11年1月29日)後掲)。
このため、オリジナルの書式でも構いません。
労働契約書または就業規則を併用する
また、「当該労働者に適用する部分を明確にして就業規則を労働契約の締結の際に交付することとしても差し支えない」とされています(同上)。
このため、就業規則がある使用者の場合は、労働条件通知書と就業規則を併せて交付することで、より労働条件を明確にできます。
他方で、就業規則がない使用者(常時雇用する労働者が10名未満の事業)の場合は、労働条件通知書による労働条件の明示に加えて、労働契約書により、その他の労働条件を明示します。
労働条件通知書に記載される労働条件はあくまで最低限のものですので、労働契約書を併用することで、さらに労働条件を明確化することが重要となります。
ファクシミリの送信
ファクシミリとは、いわゆるFAX(ファックス)のことです。
労働条件通知書のファクシミリによる送信は、書面の交付とは異なり、「労働者が(中略)希望した場合」に限られます(労働基準法施行規則第5条第4項)。
ここでいう「希望」については、「労使双方において、労働者が希望したか否かについて個別に、かつ、明示的に確認することが望ましい」とされています(基発第1228号第15号(平成30年12月28日)後掲。)。
この解釈例規に加えて、ファクシミリは、相手方に確実に届いたことを客観的に把握できない場合もあります。
このため、実務上は、単にファクシミリを送信するだけで労働条件通知書を交付することは、まずありません。
電子メール等の送信
「電子メール等」とは?
「電子メール等」は、労働基準法施行規則第5条(後掲)第4項第2号に規定されています。
【意味・定義】電子メール等とは?
「電子メール等」とは、電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信(有線、無線その他の電磁的方式により、符号、音響又は影像を送り、伝え、又は受けること)をいう。
電子メールは、具体的には、電子メール、ウェブメール、RCS、SMS等の方式のものとされています(基発第1228号第15号(平成30年12月28日)。後掲)。
また、「その受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信」には、SNSのメッセージ機能が該当します(同上)。
電子メール等の具体例
- パソコン・携帯電話端末によるEメール(その全部若しくは一部においてSMTP(シンプル・メール・トランスファー・プロトコル)が用いられる通信方式を用いるもの)
- Yahoo!メールやGmailといったウェブメールサービス(同上)
- RCS(リッチ・コミュニケーション・サービス。+メッセージ(プラス・メッセージ)等、携帯電話同士で文字メッセージ等を送信できるサービス)(携帯して使用する通信端末機器に、電話番号を送受信のために用いて通信文その他の情報を伝達する通信方式を用いるもの)
- SMS(ショート・メッセージ・サービス)(同上)
- LINEやFacebook等のSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)のメッセージ機能等を利用した電気通信
あくまで「記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る」
原則として電子メール、ウェブメール、SNSのメッセージ機能のいずれかを使う
労働基準法施行規則第5条第4条第2号のカッコ書きにあるとおり、この電子メール等は、「記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る」とされています。
この点について、「RCSやSMSについては、PDF等の添付ファイルを送付することができないこと、送信できる文字メッセージ数に制限等があり、また、原則である書面作成が念頭に置かれていないサービスであるため、労働条件明示の手段としては例外的なもの」(基発第1228号第15号(平成30年12月28日)。後掲)とされています。
このため、原則として電子メール、ウェブメール、SNSのメッセージ機能等による送信の方法とすることが「望ましい」(同上)とされています。
労働条件通知書は電子メール・メッセージにPDFファイルを添付する
労働条件通知書において、絶対的明示事項のみならず、相対的明示事項まで記載する場合、RCSやSMSで明示するのは、文字数に限界があるため、現実的ではありません。
また、すでに述べたとおり、労働条件通知書は、絶対的明示事項と相対的明示事項の両者を記載することが望ましいです。
このため、実務上は、労働条件通知書は、電子メール、ウェブメール、SNSのメッセージ機能等のいずれかの方法で送信します。
たとえ労働者が別の方法を望んだ場合でもPDFファイル等の添付で対応する
なお、「労働者が書面の交付による明示以外の方法を望んだ場合であっても、電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る」とされています(基発第1228号第15号(平成30年12月28日)。後掲)。
これは、「明示された事項を労働者がいつでも確認することができるよう、当該労働者が保管することのできる方法により明示する必要がある」からです(同上)。
また、「『出力することにより書面を作成することができる』とは、当該電子メール等の本文又は当該電子メール等に添付されたファイルについて、紙による出力が可能であることを指すが、労働条件の明示を巡る紛争の未然防止及び書類管理の徹底の観点から、労働条件通知書に記入し、電子メール等に添付し送信する等、可能な限り紛争を防止しつつ、書類の管理がしやすい方法とすることが望ましい」とされています(同上)。
以上の点から、一般的には、労働条件通知書は、使用者がPDFファイルで作成し、それを添付した電子メール・ウェブメール・メッセージを労働者に対し送信することが多いです。
事前に労働者による希望の確認が必要
労働条件通知書の電子メール等による送信は、ファクシミリによる送信と同様に、書面の交付とは異なり、「労働者が(中略)希望した場合」に限られます(労働基準法施行規則第5条第4項)。
すでに述べたとおり、ここでいう「希望」については、「労使双方において、労働者が希望したか否かについて個別に、かつ、明示的に確認することが望ましい」とされています(基発第1228号第15号(平成30年12月28日)後掲。)。
このため、あらかじめこの「希望」について確認しておく必要があります。
よって、使用者は、労働者に対し、実際に労働条件通知書を送信する予定の電子メール等により、確認しておくべきでしょう。
電子メール等の「送信」とは?
電子メール等は、当然ながら、労働者に受信されなければなりません。
この点について、「労働者が受信拒否設定をしていたり、電子メール等の着信音が鳴らない設定にしたりしているなどのために、個々の電子メール等の着信の時点で、相手方である受信者がそのことを認識し得ない状態であっても、受信履歴等から電子メール等の送信が行われたことを受信者が認識しうるのであれば、『電子メール等の送信』に該当するものと解される」とされています(基発第1228号第15号(平成30年12月28日)。後掲)。
「ただし、労働条件の明示を巡る紛争の未然防止の観点を踏まえると、使用者があらかじめ労働者に対し、当該労働者の端末等が上記の設定となっていないか等を確認した上で送信することが望ましい」ともされています(同上)。
よって、使用者は、労働者に対し、すでに述べた労働者の希望の確認の際に、労働条件通知書を送信する方法や、受信できる設定にしておく旨等も伝えておくべきでしょう。
労働者には書面の作成等により情報を保存するように伝える
労働条件通知書の送信の際には、単に送信するのではなく、「書面の作成等により情報を保存するように伝えることが望ましい」(基発第1228号第15号(平成30年12月28日)。後掲)とされています。
これは、電子メール・ウェブメール・SNSのメッセージ機能は、「情報の保存期間が一定期間に限られている場合があることから、労働者が内容を確認しようと考えた際に情報の閲覧ができない可能性がある」(同上)ためです。
労働者のブログ、ホームページ、SNSへのコメントによる労働条件通知書の送信はNG
なお、労働者のブログ、ホームページ、SNSへのコメントによって労働条件通知書を送信することは、認められていません。
これは、「労働者が開設しているブログ、ホームページ等への書き込みや、SNSの労働者のマイページにコメントを書き込む行為等、特定の個人がその入力する情報を電気通信を利用して第三者に閲覧させることに付随して、第三者が特定個人に対し情報を伝達することができる機能が提供されるものについては、『その受信する者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信』には含まれない」とされているためです(基発第1228号第15号(平成30年12月28日)。後掲)。
労働条件通知書を交付する時期・タイミングは?
「労働契約の締結に際し」とは?
労働条件通知書を交付する時期は、労働契約の締結の際です。
この「労働契約の締結の際」が具体的にいつの時点を意味するのかは、解釈例規等でも必ずしも明らかではありません。
ただ、本条にもとづく労働条件の明示の趣旨を鑑みると、使用者から労働条件を明示する形で労働契約を申込み、労働者がこれを承諾する、という手続きが望ましいでしょう。
なお、労働契約の終了後に再契約をする場合であっても、使用者は、同様に労働条件通知書を交付する義務があります。
労働条件通知書+労働契約書・就業規則で対応する
労働契約に限らず、契約は、申込みと承諾により成立します(民法第522条第1項)。
民法第522条(契約の成立)
1 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
この点について、労働契約の場合は、実務上、使用者は、労働条件通知書単体(特に内定時)か、またはこれに加えて労働契約書もしくは就業規則を交付することで、労働契約の申込みをおこないます。
これに対し、労働者は、内定承諾書等の入社の意思表示が記載された書面を交付し、または労働契約書を取交すことにより、使用者による労働契約の申込みに対し承諾します。
募集時には必要ないが職安法の表示義務あり
なお、労働条件通知書は、あくまで「労働契約の締結に際し」交付しなければならない書面ですので、労働者の募集時には、特に交付する必要はありません。
しかしながら、職安法により、労働者の募集時にも、労働条件を明示しなければなりません。
職業安定法第5条の3(労働条件等の明示)
1 公共職業安定所、特定地方公共団体及び職業紹介事業者、労働者の募集を行う者及び募集受託者並びに労働者供給事業者は、それぞれ、職業紹介、労働者の募集又は労働者供給に当たり、求職者、募集に応じて労働者になろうとする者又は供給される労働者に対し、その者が従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。
2 求人者は求人の申込みに当たり公共職業安定所、特定地方公共団体又は職業紹介事業者に対し、労働者供給を受けようとする者はあらかじめ労働者供給事業者に対し、それぞれ、求職者又は供給される労働者が従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。
3 求人者、労働者の募集を行う者及び労働者供給を受けようとする者(供給される労働者を雇用する場合に限る。)は、それぞれ、求人の申込みをした公共職業安定所、特定地方公共団体若しくは職業紹介事業者の紹介による求職者、募集に応じて労働者になろうとする者又は供給される労働者と労働契約を締結しようとする場合であつて、これらの者に対して第一項の規定により明示された従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件(以下この項において「従事すべき業務の内容等」という。)を変更する場合その他厚生労働省令で定める場合は、当該契約の相手方となろうとする者に対し、当該変更する従事すべき業務の内容等その他厚生労働省令で定める事項を明示しなければならない。
4 前3項の規定による明示は、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により行わなければならない。
用語の定義
「使用者」とは?
【意味・定義】使用者とは?
「使用者」とは、事業主または事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。
労働基準法第10条
この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。
「労働契約」とは?
労働契約は、労働基準法では定義がありませんが、労働契約法第6条で、次のような規定があります。
労働契約法第6条(労働契約の成立)
労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。
【意味・定義】労働契約とは?
労働契約とは、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がその労働に対して賃金を支払う契約をいう。
労働契約法での労働契約の定義は、民法上の雇用契約とは若干表現がことなります(特に「使用されて」という部分)。
この違いに注目し、労働契約と民法上の雇用契約について、同じであるとする説(同一説)と別であるとする説(峻別説)があります。
ただし、実務上は、特に考慮する必要はありません。
「労働者」とは?
【意味・定義】労働者とは?
「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
労働基準法第9条(定義)
この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
「厚生労働省令で定める事項」とは?
本項でいう「厚生労働省令で定める事項」とは、労働基準法施行規則第5条(後掲)第1項各号列記の事項です。
「厚生労働省令で定める方法」とは?
本項でいう「厚生労働省令で定める方法」とは、労働基準法施行規則第5条(後掲)第4項の方法(前述のとおり)であり、書面の交付、ファクシミリの送信、電子メール等の送信のいずれかの方法を意味します。
労働基準法第15条第1項(労働条件の明示)違反の効果・罰則
本項に違反して労働条件の明示がなかったとしても、労働契約自体は有効に成立し、その労働条件は、労働協約、就業規則、労働基準法によります。
また、本項違反は、労働基準法第120条により、「30万円以下の罰金」に該当します。
労働基準法第120条
次の各号のいずれかに該当する者は、30万円以下の罰金に処する。
(1)第14条、第15条第1項若しくは第3項、第18条第7項、第22条第1項から第3項まで、第23条から第27条まで、第32条の2第2項(第32条の3第4項、第32条の4第4項及び第32条の5第3項において準用する場合を含む。)、第32条の5第2項、第33条第1項ただし書、第38条の2第3項(第38条の3第2項において準用する場合を含む。)、第39条第7項、第57条から第59条まで、第64条、第68条、第89条、第90条第1項、第91条、第95条第1項若しくは第2項、第96条の2第1項、第105条(第100条第3項において準用する場合を含む。)又は第106条から第109条までの規定に違反した者
(2)第70条の規定に基づいて発する厚生労働省令(第14条の規定に係る部分に限る。)に違反した者
(3)第92条第2項又は第96条の3第2項の規定による命令に違反した者
(4)第101条(第100条第3項において準用する場合を含む。)の規定による労働基準監督官又は女性主管局長若しくはその指定する所属官吏の臨検を拒み、妨げ、若しくは忌避し、その尋問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をし、帳簿書類の提出をせず、又は虚偽の記載をした帳簿書類の提出をした者
(5)第104条の2の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は出頭しなかつた者
労働基準法第15条第1項(労働条件の明示)に関連する法令
労働基準法施行規則第5条
労働基準法施行規則第5条
1 使用者が法第15条第1項前段の規定により労働者に対して明示しなければならない労働条件は、次に掲げるものとする。ただし、第1号の2に掲げる事項については期間の定めのある労働契約であって当該労働契約の期間の満了後に当該労働契約を更新する場合があるものの締結の場合に限り、第4号の2から第11号までに掲げる事項については使用者がこれらに関する定めをしない場合においては、この限りでない。
(1)労働契約の期間に関する事項
(1の2)期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
(1の3)就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
(2)始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
(3)賃金(退職手当及び第五号に規定する賃金を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
(4)退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
(4の2)退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
(5)臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及び第8条各号に掲げる賃金並びに最低賃金額に関する事項
(6)労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
(7)安全及び衛生に関する事項労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
(8)職業訓練に関する事項
(9)災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
(10)表彰及び制裁に関する事項
(11)休職に関する事項
2 使用者は、法第15条第1項前段の規定により労働者に対して明示しなければならない労働条件を事実と異なるものとしてはならない。
3 法第15条第1項後段の厚生労働省令で定める事項は、第1項第1号から第4号までに掲げる事項(昇給に関する事項を除く。)とする。
4 法第15条第1項後段の厚生労働省令で定める方法は、労働者に対する前項に規定する事項が明らかとなる書面の交付とする。ただし、当該労働者が同項に規定する事項が明らかとなる次のいずれかの方法によることを希望した場合には、当該方法とすることができる。
(1)ファクシミリを利用してする送信の方法
(2)電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信(電気通信事業法(昭和59年法律第86号)第2条第1号に規定する電気通信をいう。以下この号において「電子メール等」という。)の送信の方法(当該労働者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る。)
労働基準法第15条第1項(労働条件の明示)の解釈例規
基発第14号(平11年1月29日)
書面の様式は自由であること。
なお、当該労働者に適用する部分を明確にして就業規則を労働契約の締結の際に交付することとしても差し支えないこと。
基発第1228号第15号(平成30年12月28日)
第4 労働条件の明示の方法(則第5条第4項関係)
<労働者が希望した場合>
則第5条第4項の「労働者が(中略)希望した場合」とは、労働者が使用者に対し、口頭で希望する旨を伝達した場合を含むと解されるが、法第15条の規定による労働条件の明示の趣旨は、労働条件が不明確なことによる紛争を未然に防止することであることに鑑みると、紛争の未然防止の観点からは、労使双方において、労働者が希望したか否かについて個別に、かつ、明示的に確認することが望ましい。<「電子メール等」の具体的内容>
「電子メール」とは、特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(平成14年法律第26号)第2条第1号の電子メールと同様であり、特定の者に対し通信文その他の情報をその使用する通信端末機器(入出力装置を含む。)の影像面に表示させるようにすることにより伝達するための電気通信(有線、無線その他の電磁的方式により、符号、音響又は影像を送り、伝え、又は受けることをいう(電気通信事業法第2条第1号)。)であって、①その全部若しくは一部においてSMTP(シンプル・メール・トランスファー・プロトコル)が用いられる通信方式を用いるもの、又は②携帯して使用する通信端末機器に、電話番号を送受信のために用いて通信文その他の情報を伝達する通信方式を用いるものをいうと解される。
①にはパソコン・携帯電話端末によるEメールのほか、Yahoo!メールやGmailといったウェブメールサービスを利用したものが含まれ、②にはRCS(リッチ・コミュニケーション・サービス。+メッセージ(プラス・メッセージ)等、携帯電話同士で文字メッセージ等を送信できるサービスをいう。)や、SMS(ショート・メッセージ・サービス。携帯電話同士で短い文字メッセージを電話番号宛てに送信できるサービスをいう。)が含まれる。
「その受信する者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信」とは、具体的には、LINEやFacebook等のSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)メッセージ機能等を利用した電気通信がこれに該当する。
なお、上記②の例えばRCSやSMSについては、PDF等の添付ファイルを送付することができないこと、送信できる文字メッセージ数に制限等があり、また、原則である書面作成が念頭に置かれていないサービスであるため、労働条件明示の手段としては例外的なものであり、原則として上記①の方法やSNSメッセージ機能等による送信の方法とすることが望ましい。労働者が開設しているブログ、ホームページ等への書き込みや、SNSの労働者のマイページにコメントを書き込む行為等、特定の個人がその入力する情報を電気通信を利用して第三者に閲覧させることに付随して、第三者が特定個人に対し情報を伝達することができる機能が提供されるものについては、「その受信する者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信」には含まれないことに留意する必要がある。
上記のサービスによっては、情報の保存期間が一定期間に限られている場合があることから、労働者が内容を確認しようと考えた際に情報の閲覧ができない可能性があるため、使用者が労働者に対して、労働者自身で出力による書面の作成等により情報を保存するように伝えることが望ましい。<電子メール等の「送信」の考え方>
電子メール等の「送信」については、労働者が受信拒否設定をしていたり、電子メール等の着信音が鳴らない設定にしたりしているなどのために、個々の電子メール等の着信の時点で、相手方である受信者がそのことを認識し得ない状態であっても、受信履歴等から電子メール等の送信が行われたことを受信者が認識しうるのであれば、「電子メール等の送信」に該当するものと解される。
ただし、労働条件の明示を巡る紛争の未然防止の観点を踏まえると、使用者があらかじめ労働者に対し、当該労働者の端末等が上記の設定となっていないか等を確認した上で送信することが望ましい。<記録の出力及び書面の作成>
労働条件の明示の趣旨を鑑みると、使用者が労働者に対し確実に労働条件を明示するとともに、その明示された事項を労働者がいつでも確認することができるよう、当該労働者が保管することのできる方法により明示する必要があることから、労働者が書面の交付による明示以外の方法を望んだ場合であっても、電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る。
この場合において「出力することにより書面を作成することができる」とは、当該電子メール等の本文又は当該電子メール等に添付されたファイルについて、紙による出力が可能であることを指すが、労働条件の明示を巡る紛争の未然防止及び書類管理の徹底の観点から、労働条件通知書に記入し、電子メール等に添付し送信する等、可能な限り紛争を防止しつつ、書類の管理がしやすい方法とすることが望ましい。<その他の留意事項>
【明示しなければならない労働条件の範囲】
今回の改正省令については、労働条件の明示方法について改正を行うものであることから、明示しなければならない労働条件の範囲について変更を加えるものではない。【電子メール等による送信の方法による明示の場合の署名等】
電子メール等による送信の方法による明示を行う場合においても、書面による交付と同様、明示する際の様式は自由であるが、紛争の未然防止の観点から、明示しなければならない事項に加え、明示を行った日付や、当該電子メール等を送信した担当者の個人名だけでなく労働条件を明示した主体である事業場や法人等の名称、使用者の氏名等を記入することが望ましい。引用元: ・働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法関係の解釈について(◆平成30年12月28日基発第1228015号)
