労働基準法第15条第3項(労働条件の明示)の条文
労働基準法第15条(労働条件の明示)
1 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
2 前項の規定によって明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
3 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から14日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。
労働基準法第15条第3項(労働条件の明示)の解説
趣旨:使用者の旅費負担義務について規定
本項は、第1項により明示された労働条件と事実とが異なる場合において労働者が前項にもとづいて契約解除権を行使したときにおける、使用者の旅費負担義務について規定しています。
用語の定義
「住居」とは?
【意味・定義】住居とは?
「住居」とは、民法第22条に規定する住所および同第23条に規定する居所をいう。
第22条(住所)
各人の生活の本拠をその者の住所とする。
第23条(居所)
1 住所が知れない場合には、居所を住所とみなす。
2 日本に住所を有しない者は、その者が日本人又は外国人のいずれであるかを問わず、日本における居所をその者の住所とみなす。ただし、準拠法を定める法律に従いその者の住所地法によるべき場合は、この限りでない。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
住居は、会社の寄宿舎・寮、賃貸物件(マンション、アパート、借家、間借り等)などが該当します。
「労働者」とは?
【意味・定義】労働者とは?
「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
労働基準法第9条(定義)
この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
「使用者」とは?
【意味・定義】使用者とは?
「使用者」とは、事業主または事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。
労働基準法第10条
この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。
「帰郷」とは?
【意味・定義】帰郷とは?
「帰郷」とは、労働者が、就業する直前に居住していた場所または父母その他の親族の保護を受ける場合にはその者の住所に帰ることをいう。
ここでいう帰郷には、「父母その他の親族の保護を受ける場合にはその者の住所」への移動も含みます(発基第17号(昭和22年9月13日)。後掲)。
「必要な旅費」とは?
本人のみならず家族の旅費も含む
【意味・定義】必要な旅費とは?
「必要な旅費」とは、本人および家族に関する、帰郷に通常必要とする一切の費用をいう。
本項の「必要な旅費」とは、「労働者本人のみならず、就業のため移転した家族の旅費を含む」とされています(発基第17号(昭和22年9月13日)。後掲)。
必要な旅費の具体例
必要な旅費の具体例
- 交通費
- 食費
- 宿泊費
- 引越し代
- 家族の旅費
必要な旅費の負担方法・支払期限
本項の「必要な旅費」の負担方法については、金銭または実物支給のいずれかの方法があります。
この点について、使用者による負担方法は、法令や解釈例規には、必ずしも明記されていません。
同様に、支払期限についても、特に明記されていません。
労働者の保護の観点では、なるべく金銭により、事前に負担することが望ましいと思われます。
労働基準法第15条第3項(労働条件の明示)違反の効果・罰則
本項違反は、労働基準法第120条により、「30万円以下の罰金」に該当します。
労働基準法第120条
次の各号のいずれかに該当する者は、30万円以下の罰金に処する。
(1)第14条、第15条第1項若しくは第3項、第18条第7項、第22条第1項から第3項まで、第23条から第27条まで、第32条の2第2項(第32条の3第4項、第32条の4第4項及び第32条の5第3項において準用する場合を含む。)、第32条の5第2項、第33条第1項ただし書、第38条の2第3項(第38条の3第2項において準用する場合を含む。)、第39条第7項、第57条から第59条まで、第64条、第68条、第89条、第90条第1項、第91条、第95条第1項若しくは第2項、第96条の2第1項、第105条(第100条第3項において準用する場合を含む。)又は第106条から第109条までの規定に違反した者
(2)第70条の規定に基づいて発する厚生労働省令(第14条の規定に係る部分に限る。)に違反した者
(3)第92条第2項又は第96条の3第2項の規定による命令に違反した者
(4)第101条(第100条第3項において準用する場合を含む。)の規定による労働基準監督官又は女性主管局長若しくはその指定する所属官吏の臨検を拒み、妨げ、若しくは忌避し、その尋問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をし、帳簿書類の提出をせず、又は虚偽の記載をした帳簿書類の提出をした者
(5)第104条の2の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は出頭しなかつた者
労働基準法第15条第3項(労働条件の明示)の解釈例規
発基第17号(昭和22年9月13日)
本条は、金額を予定することを禁止するのであつて、現実に生じた損害について賠償を請求することを禁止する趣旨ではないこと。
基収第2483号(昭和23年7月20日)
- 法第十五条中の帰郷旅費とは、「本人の到着地、父母その他の親族の保護を受ける場合にはその者の住所迄の実費」と解してよいか。又昭和二十二年九月十三日付発基第一七号における家族とは、どの範囲のものをいうか。
- 前段は見解のとおり。
後段については労働者により、生計を維持されている同居の親族(届出をしないが事実上その者と同様の事情にあるものを含む。)をいうものと解せられたい。
