労働基準法第22条第4項(退職時等の証明)の条文

労働基準法第22条(退職時等の証明)

1 労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。

2 労働者が、第20条第1項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。ただし、解雇の予告がされた日以後に労働者が当該解雇以外の事由により退職した場合においては、使用者は、当該退職の日以後、これを交付することを要しない。

3 前2項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない。

4 使用者は、あらかじめ第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信をし、又は第1項及び第2項の証明書に秘密の記号を記入してはならない。

労働基準法第22条第4項(退職時等の証明)の解説

趣旨:使用者による労働者の就業妨害の禁止の規定

本項は、労働者の退職にあたり、使用者による労働者の就業妨害のための計画的な通信や秘密記号の記入を禁止した条項です。

本項の趣旨は、「所謂ブラツクリストの回覧の如き予め計画的に就業を妨げることを禁止する趣旨である」とされています(発基第17号(昭和22年9月13日)。後掲)。

用語の定義

「使用者」とは?

【意味・定義】使用者とは?

「使用者」とは、事業主または事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。

労働基準法第10条

この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。

あらかじめ第三者と謀り」とは?

【意味・定義】あらかじめ第三者と謀りとは?

「あらかじめ第三者と謀り」とは、使用者と第三者が事前の申し合わせることをいう。

「あらかじめ第三者と謀り」とは、使用者と第三者が事前の申し合わせることを意味します。

このため、「事前の申し合せに基かず個々具体的の照合に対して回答することは差し支へない」とされています(発基第17号(昭和22年9月13日)。後掲)。

なお、こうした照会に対する回答は、労働基準法では差支えなかったとしても、労働者の承諾が無い場合は、個人情報保護法には抵触するおそれがあります。

「労働者」とは?

【意味・定義】労働者とは?

「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

労働基準法第9条(定義)

この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

「労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信」とは?

「労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信」とは、いわゆる「秘密の通信」のことです。

なお、ここでいう「労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動」は、「制限列記事項であって例示でない」とされています(基発第502号(昭和22年12月15日)、基発第122602号(平成15年12月26日)。後掲)。

よって、これら以外の事項、例えば「著しく不適格」な生命保険会社の外務員に関するブラックリストの作成について、本項に抵触しないものとされています(基収第2716号(昭和24年9月12日)、基発第1226002号(平成15年12月26日))。

「信条」とは?

【意味・定義】信条とは?

「信条」とは、特定の宗教的または政治的信念をいう。

「信条」とは、「特定の宗教的もしくは政治的信念」のことを意味します(発基17号(昭和22年9月13日)。後掲)。

「社会的身分」とは?

【意味・定義】社会的身分とは?

「社会的身分」とは、生来の身分をいう。

「社会的身分」とは、「生来の身分」のことを意味します(発基17号(昭和22年9月13日)。後掲)。

労働基準法第22条第4項(退職時等の証明)違反の効果・罰則

本項に違反し、秘密の通信や退職証明書に秘密の記号の記載をした使用者は、労働基準法第119条により、「6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」に該当します。

労働基準法第119条

次の各号のいずれかに該当する者は、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

(1)第3条、第4条、第7条、第16条、第17条、第18条第1項、第19条、第20条、第22条第4項、第32条、第34条、第35条、第36条第6項、第37条、第39条(第7項を除く。)、第61条、第62条、第64条の3から第67条まで、第72条、第75条から第77条まで、第79条、第80条、第94条第2項、第96条又は第104条第2項の規定に違反した者

(2)第33条第2項、第96条の2第2項又は第96条の3第1項の規定による命令に違反した者

(3)第40条の規定に基づいて発する厚生労働省令に違反した者

(4)第70条の規定に基づいて発する厚生労働省令(第62条又は第64条の3の規定に係る部分に限る。)に違反した者

労働基準法第22条第4項(退職時等の証明)の解釈例規

発基第17号(昭和22年9月13日)

本条第三項は、所謂ブラツクリストの回覧の如き予め計画的に就業を妨げることを禁止する趣旨であるから、事前の申し合せに基かず個々具体的の照合に対して回答することは差し支へないこと。

基発第502号(昭和22年12月15日)、基発第122602号(平成15年12月26日)

法第二十二条第三項の「国籍、信条云々」は例示であるか。例示であるとすれば例示以外の事項についても(一)予め第三者と謀り(二)就業を妨げることを目的としておれば、通信は不可能となるが、例示でないとすれば通信が可能になると解せられるからである。
本条第三項の「国籍、信条云々」は制限列記事項であって例示でない。

発基第17号(昭和22年9月13日)

信条とは、特定の宗教的もしくは政治的信念をいい、社会的身分とは、生来の身分をいうこと。