労働基準法第23条第1項(金品の返還)の条文

労働基準法第23条(金品の返還)

1 使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があつた場合においては、7日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。

2 前項の賃金又は金品に関して争がある場合においては、使用者は、異議のない部分を、同項の期間中に支払い、又は返還しなければならない。

労働基準法第23条第1項(金品の返還)の解説

趣旨:使用者による労働者に対する金品の返還義務の規定

本項は、使用者による、死亡・退職をした労働者・権利者に対する金品の返還義務を規定した条項です。

労働者が死亡し、または退職した場合、使用者は、その労働者や権利者(相続人)に対し、退職後7日以内に、賃金等を含む労働者の金品を支払い、または返還しなければなりません。

本条は、退職した労働者や死亡した労働者の遺族の生活を困窮されないための条項です。

同時に、使用者が労働者の金品を返還しないことで、不当に労働者の退職を留めることを防止するものでもあります。

労働基準法第24条より優先して適用される

なお、本条は、労働基準法第24条第2項よりも優先して適用されるとされています。

同項には、賃金について「一定の期日を定めて支払わなければならない」とされています。

しかし、本条にもとづき権利者からの請求があった場合、使用者は、通常の賃金の支払期日の到来前であっても、7日以内に賃金を支払わなければなりません。

退職手当は7日以内ではなく就業規則で定めた支払時期で問題ない

なお、「退職手当は、通常の賃金の場合と異なり、予め就業規則等で定められた支払時期に支払えば足りる」とされています(基収第5483号(昭和26年12月27日)、基発第150号(昭和63年3月14日)。後掲)。

用語の定義

「使用者」とは?

【意味・定義】使用者とは?

「使用者」とは、事業主または事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。

労働基準法第10条

この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。

「労働者」とは?

【意味・定義】労働者とは?

「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

労働基準法第9条(定義)

この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

「退職」とは?

本項の「退職」には、退職の原因を問わず、あらゆる退職が該当します。

このため、労働者による任意退職、使用者による解雇のいずれも該当します。

さらに、契約期間の満了による契約の終了による場合も含まれます。

「権利者」とは?

【意味・定義】権利者とは?

「権利者」労働基準法第23条第1項)とは、退職した労働者本人または死亡した労働者の相続人をいう。

本項の「権利者」は、退職した労働者本人または死亡した労働者の遺産相続人であって、「一般債権者を含まない」とされています(発基第17号(昭和22年9月13日)。後掲)。

「賃金」とは?

【意味・定義】賃金とは?

「賃金」とは、「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」をいう。

労働基準法第11条

この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。

「労働者の権利に属する金品」とは?

本項でいう「労働者の権利に属する金品」には、賃金、積立金、保証金、貯蓄金が該当します。

また、「その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品」とあるとおり、労働者が権利を有する金銭や、労働者に所有権がある物品は、すべて該当します。

労働者の「ふとん、衣類等」が「労働者の権利に属する金品」に該当する、とした解釈例規もあります(基収第8818号(昭和41年2月2日))。

労働基準法第23条第1項(金品の返還)違反の効果・罰則

本項に違反し、権利者からの請求があった日から起算して7日以内に金品の返還をしない使用者は、労働基準法第120条第1号により、「30万円以下の罰金」に該当します。

労働基準法第120条

次の各号のいずれかに該当する者は、30万円以下の罰金に処する。

(1)第14条、第15条第1項若しくは第3項、第18条第7項、第22条第1項から第3項まで、第23条から第27条まで、第32条の2第2項(第32条の3第4項、第32条の4第4項及び第32条の5第3項において準用する場合を含む。)、第32条の5第2項、第33条第1項ただし書、第38条の2第3項(第38条の3第2項において準用する場合を含む。)、第39条第7項、第57条から第59条まで、第64条、第68条、第89条、第90条第1項、第91条、第95条第1項若しくは第2項、第96条の2第1項、第105条(第100条第3項において準用する場合を含む。)又は第106条から第109条までの規定に違反した者

(2)第70条の規定に基づいて発する厚生労働省令(第14条の規定に係る部分に限る。)に違反した者

(3)第92条第2項又は第96条の3第2項の規定による命令に違反した者

(4)第101条(第100条第3項において準用する場合を含む。)の規定による労働基準監督官又は女性主管局長若しくはその指定する所属官吏の臨検を拒み、妨げ、若しくは忌避し、その尋問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をし、帳簿書類の提出をせず、又は虚偽の記載をした帳簿書類の提出をした者

(5)第104条の2の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は出頭しなかつた者

労働基準法第23条第1項(金品の返還)の解釈例規

発基第17号(昭和22年9月13日)

本条第一項及び第二項の「権利者」とは、一般債権者を含まないこと。

基収第5483号(昭和26年12月27日)、基発第150号(昭和63年3月14日)

退職手当は、通常の賃金の場合と異なり、予め就業規則等で定められた支払時期に支払えば足りるものである。